「鉄」「ステンレス」はどうちがうのか
- toyamahamono
- 4月4日
- 読了時間: 5分
更新日:4月6日
剪定鋏を選ぶとき、多くの方はサイズ、重さ、握りやすさに目を向けます。それらは道具を選定する上でとても大切なことですが そのうえで、使い心地を大きく左右するもう一つのポイントが、「素材」です。比較されることが多いのが、「鋼※鉄」と「ステンレス鋼」です。
先に結論を申し上げますと、刃の鋭さ=切味を重視するなら「鋼」、錆びにくさや日常の扱いやすさを重視するなら「ステンレス鋼」という選択肢です。
2つの素材について単にどちらが優れているということではなく、使い方や環境により適した素材を選択することが大切です。
外山刃物がそれぞれの素材を用意しているのもそのためです。より切味に重視したい方もいれば、毎日の道具管理を気軽に使いたい方もいる。使う人たちにとって必要な要素を自由に選択できるバリエーションを大切に考えています。
同形状の鋏で両素材を用意している理由

外山刃物の剪定鋏 は、バイパス型bypassの刃です。
植物を切るとき、刃がすれ違うよう切り込むパイパス構造は、切断後の切口をきれいに整えやすく作業することが可能な設計です。
その上で私たちは、多くのモデルで 「鋼」 と 「ステンレス」の両方を用意しています。
・ 剪定鋏:T13(High-Carbon Steel) / T513(Stainless Steel)
芽切鋏:T17(High-Carbon Steel) / T517(Stainless Steel)
花 鋏:T8(High-Carbon Steel) / T10(Stainless Steel)
盆栽鋏:T4-3(High-Carbon Steel)/ T4-3S(Stainless Steel)
使う人たちにとって必要な要素を自由に選択できるからこそ、より自分にあった道具に出会うことができ、良い環境を手にすることが出来るのであると思います。
道具を選択する上でこの比較表を活用してください
比較項目 | 鋼 | ステンレス鋼 |
切り心地 | 鋭い刃の感触を出しやすい | 鋼よりは劣るが、扱いやすさとバランスが取りやすい |
研ぎ直しとの相性 | 比較的研ぎ直しやすく長く使いやすい傾向がある | 研ぎ直しは鋼に比べて研ぎにくい素材である |
錆びにくさ | 水分や樹液の放置にで錆が出やすいので注意が必要 | 湿度の高い環境でも比較的錆びにくい傾向がある |
日常の扱いやすさ | 保管方法・手入れを前提に使う方に向いている | 錆びを気にせず気軽に使いたい方に向いている |
向いている使い方 | 切味、研ぎ直し、長期使用を重視する使い方 | 低メンテナンス、扱いやすさを重視する使い方 |
なぜ、綺麗な切断面が大切なのか

剪定鋏に必要とされるものは、枝が楽に切れることだけではなく、切った植物の切口が綺麗に整うことも求められます。
切断面がつぶれたり切口の植物繊維が荒れたりすると、負担が大きくなり、その後の発育にも影響しやすくなります。 特に「若枝」「細枝」「やわらかい茎」「ランやバラ」のようにウィルスからの保護や切断面の状態をより美しくしたい場面では、刃が植物に無理なく入り込み、すっきり切れることがもっとも重要です。美しい切断面を生み出すには素材の選択だけではなく刃の先端加工や理想の角度に整っていること、刃合わせの調整が適切であることが重要です。私たちの鋏は長年の経験と知識をベースにこれらの条件を満たしもっとも理想とする状態に完成されています。
外山刃物が鋼材について重視していること

外山刃物は1861年の創業以来、三条で火と鉄に向き合ってきました。今日の考えとして、単に硬く鋭い鋼だけを使うことではなく、鋏の機能として必要とされる性能をどうバランスよく成立させるのかという考え方です。
日本製の鋼材を用い、いずれの素材も鍛造により再編させ質を高め仕上げていきます。
剪定鋏のように硬く太い枝を繰り返し切る道具では、素材の硬さだけでなく、欠けにくさを生み出す「靭性※粘り強さ」が導く継続的な安定感が重要です。包丁では、柔らかな食材を切るための最良な硬さを。鋏では、柔らかくも硬くもあらゆるシーンに適応出来る素材が求められます。硬さだけを追いすぎると実際の使用環境で破損のリスクが高まります。
私たちが追い求めるものは、「切れ味」「耐久性」「安定感」の総合的なバランスであり「鍛造」は、その土台となる理想の素材を作り上げることができるのです。使う人の手の中で、あらゆる側面において長く信頼できる道具であるためにどうあるべきかを考えています。
「鋼」― 切れ味を育てながら使いたい方へ

「鋼」素材が刃物において支持されてきた理由の一つは、鋭い刃を維持しやすく、切れ味が落ちた後も研ぎ直しによって状態を整えやすいからです。
枝に刃を当てたとき、すっと入っていくような感触。 刃がきれいに入ったときの、小気味よい手応え。 若枝、細枝、繊細な茎など、切断面のきれいさを大切にしたい場面では、その良さを感じやすいと考えられます。
もう一つの魅力は、手入れが楽しめることにもあります。 切れ味が落ちたら研ぎ、状態を見ながら使い続ける。そうした積み重ねによって、道具への理解が深まり、自分の手にも馴染んでいきます。 道具を育てながら使う感覚を大切にする方にとって、とても魅力的な素材です。一方で、錆びには注意が必要です。 使用後は水分や樹液を軽く拭き取り、必要に応じて乾燥や油差しを行う。そうした基本的な手入れが前提になります。
「ステンレス鋼」 ― 気軽さと信頼感を重視したい方へ

「ステンレス鋼」 の大きな利点は、やはり錆びにくさです。 湿気の多い地域、雨上がりの庭仕事、毎回ていねいな手入れが難しい状況でも、比較的扱いやすい素材です。
また、取り出してすぐ使え、片付けにも気を使いすぎなくてよいという、日常の扱いやすさも魅力です。 水中で切る花屋さんのお仕事や、
ただし、ステンレス鋼は錆びにくい素材ではあっても、まったく錆びないわけではありません。 道具を使い終えた後の最低限※の手入れ方法は必要不可欠となります。忙しい毎日の中でも、気負わずに手に取りやすい。道具を自然に生活の中へなじませたい方にとって、ステンレス鋼は実用的な選択です。
※付着した汚れや水分を拭き取り室内での保管をおこないます
自分に合う素材の選び方
「鋼」 が向いている方
切れ味の鋭さを重視したい
研ぎながら長く使いたい
道具の変化を見ながら付き合うことを楽しめる
「ステンレス鋼」 が向いている方
錆びにくさを重視したい
使用後の手入れをできるだけ簡単にしたい
雨や湿気の影響を受けやすい環境で使うことが多い
サイズ、重さ、握りやすさに加え素材への理解を深めることで、もっとも自分にあった道具をお選びください。


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